三輪自転車タクシー5ペソ事件




キューバの旅、断片的でうろ覚えな記憶を辿りながら、続きを。

場所は「カマグウェイ」という、キューバ中部にある3番目に大きい町より







2017.5.9(火)→ 5.10(水)

キューバ8-9日目  カマグウェイ ハバナ




とても親切な人にも出会い、一方で、冷たく扱われたり、明らかな「金の源」として接客をされ、苦い思い出や複雑な気持ちも残った、カマグウェイの町を後にする。


”接客仕事 → 客 =「金」以上でも以下でも何でもない”
という考えは、綺麗事を並べて蓋をしたいだけで事実理解できないこともなく、付加価値を求めるのは観光客側の都合や期待の押し付けだろう。

それでも全面的にそれを態度行動に出されると曇った気持ちにはなるが、
2年前に50年以上ぶりにアメリカとの国交が回復し、これから観光客が増え、これから「観光業」「観光客」「外国人」と触れ合い、共存し、向き合っていくこの国は今ちょうど過渡期であり、これから徐々に変化していくのだろう。


ただ、この時の私は、そんな他人事のような余裕はなく、当時者なわけで
ここ数日、連日積もりに積もっていた「複雑な気持ち」がついに爆発することとなる。






カマグウェイからハバナへ行きのバスに乗るべく、バスターミナルへ向かう。



バスターミナルまでは3輪自転車タクシーに乗る。
適当に、客を待っている三輪タクシーのお兄さんへ声をかける。

旅中はこういうしっかり公式で値段が決まっていない交通手段に乗るときは、あとから言い値でぼったくられないように、乗る前にいくらか話し合いで確定しておくのがセオリーだ。


「バスターミナルまで行きたいんだけど、いくら?」

『3だ。』

3はまあ良心的な普通の価格だ。特に値下げ交渉もいらんな。


「3ね?3よね?間違いないよね?言うたな?3って」

3輪タクシーはつい先日嫌な思いをしたので、重々に確認しておく。

『3言うてるやろ。はよ乗り。』

おいくどいぞ、という態度を少しとられながら(まあ、実際くどいよな・・・)
3だという言質をとり、自転車に乗る。



三輪自転車に揺られている間は、タクシーのお兄さんとなんてことない会話をぽつりぽつりとしたり、町の景色を眺めたり、穏やかな時間が流れていた。

こういう自転車やバイクの乗り物はスピード感やサイズ感がとても好きで、どの国でも乗っている時間は大好きな時間なのだが、手放しで楽しめないのが残念である。
(無事に乗り終えたら、「あ。よかった!問題なかったんだ!」とその時点で後追いでやっと過去形で「よかったな」となれるあたりが。)





バスターミナルに無事に到着。

「ありがとう」と伝え、3ペソを渡す。

いやいや、といわんばかりに半笑いのお兄。


不穏な空気が流れる。




これは、これはまずそうだ。






もう勘弁してくれ・・・・あとハバナに帰るだけやのに・・・!

予想外でもない出来事だったのがまたそれはそれで悲しいが、既にカマグウェイで疲労傷心気味の私に追い打ちをかけるような出来事が起こる。


『いやいや。3て。笑 8よ。8ペソよこしな』

「3って言ってたやん!! 確認したよな?3ってちゃんと!」

『8って言ったやん。お前が聞き間違えたんやろ。笑』








3(トレス)と8(オッチョ)

どこをどう聞いたら聞き間違えんねん。







すると、どんどん三輪タクシーの仲間がぞろぞろと集まってくる。

「おいおいどうした?何事だ?」

『おーい。こいつが金払わねえっていってんだよ』

「何?そいつはいけないな!」


安っぽい映画かなんかのワンシーンのようだ。
台詞だけみると大事のようだが、相手の顔は、にやにやと笑っている。
「うるせー外野は引っ込んでろ!」という台詞がこんなに適切な使用シーンがあるだろうか。


「どうしたんだい嬢ちゃん?」

「いや、3ペソっていってたのに、8ペソっていってくるから・・・。」

『おいおいおい!8だって俺は確かにいった。しょーもない嘘つかんと早くよこしな。』

「嬢ちゃん、8ペソ彼に払ってやれよ。なんか勘違いしてたんだろ?」

「はやく払っちゃいな。バスの時間、あるんだろ?」


にやにやと多勢で待つ男達。
うるせー外野は引っ込んでろ!


たかだが、500円だかどうだかくらいのお金。
バックパッカー旅は国によっては500円の差は大金で大問題なのだが、勿論そもそも旅の残り資金を考えると、500円なんて簡単に払える。5秒で解決する問題だ。
だが駄目だ。


何がダメなのか自分でもはっきり説明できないが、この「金持ってる日本人の小娘だからなんとでもちょっと押せば金巻き上げられる」という気持ちが見て取れる意図や、きっとこれは日常茶飯事で小慣れていることだとか、結託して一人に対して多勢だとか、自分の中の、自分個人としてなのか、バックパッカーとしてなのか、はたまた日本人としてなのかわからんが、とにかくなけなしのプライドが絶対に許さなかった。
ここは絶対に引けない!!


「いやだ、絶対払わない!」





『しゃーないな。じゃーポリス(警察)だな』

「そうだ、ポリスだポリス」

『いいんだな?ポリスで。』


何かにつけてすぐに「ポリス」を出してくる。他の国でも何度か遭遇した場面。
彼らはとにかく時間はあるのだ。そして5ペソ論争だけで簡単にポリスをピザハットみたいに呼びやがるのだ、こいつらは。
そして彼らは知っている。ポリスというと大概はびっくりするかもう面倒になりお金を支払うことを。
バスターミナルの真ん前で、バスの時間がすぐに迫っていることも。


たかだか500円のことでこんなに、ここまで、
こんな・・・・・・!!!!


ついに自分の中の何かが爆発した。







「ふざけんな!!!!!ええ加減にせえ!!!!

3言うたんやから3しか払わんわ誰が8と聞き間違えるかい全然ちゃうわ!

馬鹿にするのも大概にせーよ!!!!!!!

ポリス呼ぶなら呼べや!私はバス乗るわい!チャオ!!!!!」 

(↑日本語)



3ペソを彼の胸にビタン!と叩きつけ、走ってバスに乗り込んだ!

彼らはおい待て!ととっさに総出で引き留めようとしたが、バスターミナルの乗り場(屋根付き壁つきの大きな車庫だった)の中には踏み入れられないルールがあるのか、バスターミナルの中までは追いかけてくることも声をかけてくることも一切なかった。




こうして、私は、カマグウェイを後にし、ハバナへ戻った。

バスの中、ここ数日で起こった冷たい態度やトラブル、優しい人たち、素敵な景色や文化、良い時間との出会い、きっといい人も多くいるであろうこと、色んなことを思い出し、ごちゃ混ぜになり、言葉にならない気持ちがこみ上げ、涙が止まらなかった。









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読んでるだけで息が詰まった人は(私だけ?)キューバのこちらの記事で中和。
キューバ、素敵なところもたくさんアルヨ!

▶︎ 「そこは、かつて日本にもあった景色。」
http://wphotrip.sakura.ne.jp/blog/?p=17186&

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